シロアリ被害を放置すると、家の構造そのものが崩れる深刻なリスクがあります。
床下や壁の内部など、目に見えない部分から侵食が進み、気づかないうちに重大なダメージを受けているケースも少なくありません。
多くの人が「自分で何とかできる」と自己判断で駆除を試みますが、やってはいけない対処法を選んでしまうと、かえって被害が拡大する恐れがあります。
例えば、安易に市販の殺虫剤を使ってしまった結果、シロアリの巣を刺激して分散させ、被害が家全体に広がってしまったという事例もあります。
また、被害に気づいていながら「まだ大丈夫」と放置することも、取り返しのつかない状況を招く要因となります。
本記事では、シロアリ駆除に関してやってはいけないことを中心に、具体的なケースや失敗談を交えながら、正しい対処法や注意点を徹底解説します。
被害の予防から早期発見、適切な駆除方法の選び方まで、住宅を守るために知っておくべき知識を網羅的にお届けします。
記事のポイント4つ
- 市販の殺虫剤や水による対処は効果的でないことが多い
- 自己判断での駆除はリスクが高く、被害拡大の原因にもなる
- 専門業者に依頼する際の費用相場とチェックポイントを紹介
- 実際に失敗した体験談から学べる教訓も紹介
シロアリ駆除でやってはいけないこととその理由
シロアリに殺虫剤をかけてしまったらどうなる?

シロアリを見つけた際、思わず市販の殺虫剤を噴射してしまう方は多いです。その場での不快感を取り除きたい気持ちは理解できますが、これは最も避けるべき行動のひとつです。
理由:
- シロアリは殺虫剤の刺激で巣ごと移動してしまう可能性がある
- 巣を壊さずに表面上の個体だけ駆除しても意味がない
- 巣の場所が特定しづらくなり、次の対処が遅れる
- 巣の移動によって、今まで安全だった箇所にまで被害が広がることもある
- 家全体の被害確認が難しくなり、追加調査のコストが増える
また、市販の殺虫剤には即効性を重視するあまり、シロアリが本来持つ行動パターンを狂わせてしまう副作用もあります。これによって、群れの分裂や活動時間の変化を招き、結果的に発見や対応がさらに難しくなる可能性も。
参考として、害虫駆除業者も殺虫剤の乱用は推奨していません。専門家の立場から見ても、現場を不用意に刺激することは最も避けるべき選択肢です。
被害を見つけた場合は、慌てず冷静に対処することが何より重要です。まずは被害箇所の状態を確認し、可能であればスマートフォンなどで写真や動画を記録することをおすすめします。
これにより、後で専門業者に相談する際に、より的確なアドバイスを受けることができます。
シロアリ駆除作業中に家の中にいても大丈夫?
基本的に、駆除薬剤は人体への影響が少ない成分が使用されており、一般的な生活環境では問題ないレベルに抑えられています。
しかし、完全に無害というわけではなく、特に体の弱い方や環境によっては影響を受ける可能性もあります。したがって、状況に応じた配慮が必要です。
特に以下のようなケースでは、より慎重な対応が求められます:
- 小さなお子さんやペットがいる家庭(呼吸器が敏感なため影響を受けやすい)
- 化学物質に敏感な方(アレルギー体質や化学物質過敏症など)
- 換気が不十分な家屋や、構造上薬剤がこもりやすい場所にある住宅
- 高齢者や妊娠中の方が長時間滞在する空間
また、使用される薬剤の種類によってもリスクの度合いが異なります。
天然成分をベースにした低刺激タイプの薬剤もありますが、効力が弱いため適用範囲が限定されることも。逆に、強力な合成薬剤は駆除効果が高い一方で、揮発性や残留性のある成分が含まれている場合があるため、使用後の換気が必須です。
駆除作業中は一時的に外出するのが安全策です。特に家全体に薬剤が使用されるケースや、床下など密閉された空間での散布がある場合は、数時間程度の避難をおすすめします。
また、作業後は十分な換気を心がけるとともに、床や壁に残留した薬剤に触れないよう注意し、必要であれば拭き取り清掃などの処置を行いましょう。これにより、安全性をより確保することができます。
「水で死ぬ」って本当?シロアリの弱点とは

「シロアリは水に弱い」との噂がありますが、それは半分正解・半分誤解です。
実際のところ、シロアリに対する水の効果は非常に限定的であり、正しい知識なしに水を使った対処をしてしまうと、かえって逆効果になる可能性もあります。
実際には…
- シロアリは乾燥に弱く、湿気の多い場所を好む性質があります。そのため水を嫌うわけではなく、むしろ湿度のある環境が活動に適しているとも言えます。
- 一時的に水をかけたとしても、表面の個体を散らす程度で、巣の内部にいる大量のシロアリにはまったく影響がありません。
- 水によって刺激されたシロアリは危険を察知して別の場所へ逃げ、被害箇所が拡大する原因となる可能性が高いです。
- 水をかけることで木材の腐朽が進み、シロアリにとってより居心地の良い環境を作ってしまうこともあります。
- また、水が電気配線や断熱材などに影響を及ぼすこともあり、家全体の構造や安全性に思わぬ悪影響を与えるリスクも存在します。
つまり、水での対処は根本解決にならず、逆効果になることが多いのです。誤った判断で被害の拡大を招かないためにも、専門知識に基づいた対応を心がけることが重要です。
市販の殺虫剤は効果がある?おすすめと注意点
市販の殺虫剤にもシロアリ専用の製品は存在しており、一見便利な対処法のように感じられます。ホームセンターや通販サイトなどで簡単に手に入り、すぐに使える手軽さもあって、シロアリを見かけた際にまず手に取る人も多いでしょう。
おすすめされる場面:
- シロアリの初期発見時に、一時的に被害拡大を防ぎたいとき
- 巣の位置がはっきりしており、被害が局所的で明確な範囲に限られているとき
- 応急処置として短期間だけ状況を安定させたいとき
- 業者の到着を待つ間の緊急対応として使うとき
特に、羽アリを見かけた場合や、蟻道を見つけた直後など、初動として活用する分には一定の効果が見込めます。ただし、これもあくまで「一時しのぎ」であることを理解する必要があります。
注意点:
- 広範囲にわたる巣や地中深くに潜む巣には全く効果が届かない
- 誤った使い方(例えば、換気の悪い場所で大量に散布するなど)をすると、逆にシロアリの動きを警戒させて分散させるリスクがある
- シロアリは薬剤に対して耐性を持つことがあり、一度効かなくなると再度の駆除が難しくなる場合がある
- 強力な薬剤を使用した際に、家族やペットへの健康被害(アレルギー反応や呼吸器への刺激)が出る可能性もある
- 木材の内部や床下など、目視で確認できない部分には効果が及ばないため、根本的な解決にはなりにくい
結論:市販の殺虫剤は、あくまでも予防的・一時的措置としての活用にとどめるのが望ましいです。根本から駆除するには、シロアリの生態を熟知し、被害範囲を正確に把握した上で適切な処置を行う必要があります。本格的な駆除は、経験と技術を持った専門のプロに任せるのが最も確実で安全な方法です。
正しいシロアリ駆除方法と事前知識のポイント
アメリカカンザイシロアリの駆除は自分でできる?

アメリカカンザイシロアリは日本に生息するシロアリの中でも特に厄介で、住宅に深刻なダメージを与えることがあります。特に温暖化の影響で分布が広がりつつあり、関東地方や東海地方でも被害の報告が増加しています。
特徴:
- 湿気の少ない乾燥した木材にも巣を作るため、従来の対策が効きづらい
- 地中に巣を作らないため、床下点検などの従来型調査では発見が遅れやすい
- 被害に気づきにくく、発見時にはすでに建材内部がボロボロになっていることも多い
- 羽アリの形状がほかの種と似ているため、誤認されやすい
自分で駆除する方法としては…
- 木材注入型の薬剤を使い、直接被害部位に注入する(専用のドリルとノズルが必要)
- フェロモントラップで活動範囲を把握し、薬剤の投与箇所を特定する
- 損傷が軽微なうちに対象木材ごと交換するという手段もある
これらの方法は被害がごく軽度な場合や、DIY経験が豊富な方にとっては一定の効果が期待できます。しかし、薬剤の選定や注入の角度、量などに専門的な知識が求められるため、少しでも不安がある場合は無理に対応せずプロに任せるのが安全です。
ただし、被害が広範囲な場合や、建物の構造内部にまで侵入している場合は、専門業者に依頼するのが現実的です。
プロであれば、専用の機材と知識を活かして的確な調査と処置を行うことができ、再発防止のための処理や保証も受けられるケースが多いため、長期的に見てコストパフォーマンスも高くなります。
自己判断で「シロアリ駆除は必要ない」と思うリスク
家の築年数や建材、これまでにシロアリの被害を受けたことがない経験から、「うちは大丈夫だろう」と思い込んでしまう方は少なくありません。
特に築浅の住宅や鉄筋構造の建物に住んでいると、シロアリ被害とは無縁だと安心してしまいがちです。しかし、その油断が命取りになることもあります。
放置のリスク:
- 被害が進行すると、床下から柱、天井裏にまで及び、修繕費が数百万円規模に膨らむケースもある
- 柱や土台など、建物の構造的な強度が著しく低下し、地震などの災害時に倒壊リスクが高まる
- 被害状況によっては火災保険や住宅保険の対象外となり、すべて自費負担になることがある
- 不動産価値が大きく下がる可能性があり、将来の売却時にも不利になる
- 害虫の侵入を許すことで、健康リスク(アレルギーや皮膚炎など)が高まることも
また、シロアリは地中や木材内部など、目に見えない場所で静かに進行するため、気づいたときにはすでに取り返しのつかない状況になっていることも珍しくありません。
専門業者に無料調査を依頼するだけでも早期発見に繋がります。
費用や手間を理由に先延ばしにせず、年に1回程度の点検をルーティン化することで、安心して暮らせる住環境を維持することができます。「必要ない」と決めつけず、まずは客観的な診断を受けて、現状を正しく把握することが大切です。
シロアリがいる家の特徴とは?見逃しやすいサインも紹介

シロアリ被害の兆候には、気づきにくいものもあります。特に、外見上は健全に見える家屋でも、内部ではすでにシロアリが活動しているというケースは少なくありません。そのため、早期発見には日常的な注意と観察が欠かせません。
よくある兆候:
- 床がブカブカする:木材内部が食い荒らされ、踏んだ際に沈み込む感触がある
- 壁や柱を叩くと空洞音がする:内部がスカスカになっている証拠で、特に和室の柱に多い
- 羽アリの死骸や抜け殻が落ちている:繁殖期の合図で、近くに巣がある可能性が高い
- 建物の基礎や木材に泥のようなトンネル(蟻道)がある:シロアリが通行するための通路で、活発な活動のサイン
- 家具の脚や押し入れの板が急にもろくなった:乾燥材だけでなく家具類にも被害が及ぶことがある
- 湿気がこもってカビ臭く感じる場所がある:シロアリの好む環境と一致している場合が多い
これらのサインを見逃すと、被害は短期間で急速に進行する恐れがあります。特に梅雨時期や秋の繁殖シーズンは活動が活発になるため、注意が必要です。少しでも違和感を感じたら、自己判断せず専門業者に相談することをおすすめします。
手遅れになる前に!シロアリで家がダメになる年数目安
シロアリ被害が深刻化すると、家の寿命そのものを縮めることになります。
しかも、その被害は表面に現れる前に内部から進行していくため、気づいたときには既に重大な構造的損傷が起きているということも少なくありません。
シロアリは木材を食べて生活しているため、住宅の柱や土台、梁といった重要な構造体を長期間にわたって侵食します。
目安:
- 2~3年で床や柱に明らかなダメージが出るケースもあり、足元がふわふわする、ドアの建て付けが悪くなるといった初期症状が見られます
- 3~5年の放置で、床下や壁内の木材がボロボロになり、壁紙や床板に目に見えるひび割れや沈み込みが発生することも
- 5年以上放置すると、家全体のバランスが崩れ、大規模な補強工事やリフォーム、最悪の場合建て替えが必要になる可能性も高まります
参考:国土交通省のデータや建築士の調査報告からも、早期対処の重要性が強調されています。木造住宅は特にシロアリに弱く、建築後10年を超えたあたりから被害が見られる事例が多くなっています。
「まだ大丈夫」は禁物です。
目に見える症状が出ていなくても、床下や壁内ではすでに進行している可能性があります。少しでも異変を感じたら、専門業者に点検を依頼し、必要に応じて迅速に対策を講じることが住まいの寿命を守る第一歩です。
一軒家でのシロアリ駆除費用の相場はいくら?

費用はシロアリの種類、被害の規模、建物の構造、さらに地域によっても大きく異なります。
たとえば、都市部では人件費や出張費が高くなる傾向があり、地方と比較して見積もり額に差が出ることも珍しくありません。また、施工方法や使用する薬剤の種類によっても費用は変動します。
平均的な費用:
- 床下薬剤散布:10万円〜20万円程度。被害の規模や床下の状態、使用する薬剤の種類で金額に差が出ます。
- ベイト工法(駆除&予防):15万円〜30万円。設置後も定期的な点検・交換が必要なため、ランニングコストも考慮する必要があります。
- アメリカカンザイシロアリ駆除:30万円以上かかることも。駆除が難しく、対応可能な業者も限られているため、やや高額になります。
その他にかかる可能性のある費用:
- 初回調査費:無料の場合もありますが、5,000円〜10,000円かかることも
- 被害箇所の修繕費:柱の補強、床の張替えなど数万円〜数十万円規模になることも
費用を抑えるコツ:
- 複数業者から相見積もりを取り、内容と価格をしっかり比較する
- 保証期間やアフターサービスの有無を確認して、将来的な出費を抑える
- 地元での施工実績が豊富な業者を選ぶことで、移動費や出張料を削減できる可能性がある
注意:安さだけで業者を選ぶのは危険です。安価な見積もりに飛びついてしまうと、必要な施工が省略されていたり、薬剤の効果が弱かったりするケースもあります。
見積もり内容に不明点があれば、必ず説明を求めるようにしましょう。また、インターネットの口コミや実際に利用した人の体験談なども参考にして、信頼できる業者を見極めることが大切です。
【体験談】自分でシロアリ駆除して失敗した話
ある読者から寄せられた体験談を紹介します。
自宅の床下にシロアリを見つけ、市販の殺虫剤を使って対応しました。最初は静かになったように思えたのですが、半年後には別の場所にも被害が広がっており、結局プロに依頼して30万円以上の費用がかかりました。その際、調査を依頼した業者から「おそらく殺虫剤で一時的に活動を抑えたが、根本的な巣の除去にはなっておらず、群れが分散して広がった可能性がある」と言われました。さらに、誤って薬剤が換気扇の吸気口から室内に入り、家族が喉の痛みを訴える事態にもなってしまいました。
この方はDIYにある程度の知識があると自負していたそうですが、シロアリ駆除には専門的な機材と経験が不可欠であることを痛感したとのことです。
業者に頼むことを避けて自己流で済ませようとした結果、かえって費用も時間も余分にかかってしまい、最初からプロに相談していればよかったと後悔されたそうです。
教訓:
- 自己判断での駆除は「一時しのぎ」にしかならない
- 駆除の知識だけでなく、安全面の配慮や再発防止策まで視野に入れる必要がある
- プロによる徹底調査と処置が、長期的に見れば最も効率的で安心
特に被害の範囲が不明なときは、自己流ではなくプロの点検を受けるべきです。早期発見・早期対応こそが、被害拡大と無駄な出費を防ぐ最善策です。
プロが教える!シロアリ駆除でやってはいけないことまとめ

やってはいけないことチェックリスト:
- 市販の殺虫剤を無計画に使う:効果が一時的で、巣の場所を分散させてしまうリスクがある
- 被害箇所を自分でいじってしまう:刺激によってシロアリが逃げ、被害エリアを拡大させてしまう恐れがある
- 水で流そうとする:逆効果となり、木材の腐朽や家の劣化を早める可能性がある
- 「大丈夫」と思って放置する:目に見える被害がなくても、内部で深刻に進行しているケースがある
- 安すぎる業者に飛びつく:施工内容が不十分だったり、再発防止策がなされていない可能性もある
- 点検を怠る:定期点検を怠ると、被害の発見が遅れ修繕費が高額になるリスクが高まる
安全に駆除するためには:
- できるだけ現場をそのままにして記録を取る:被害箇所の状態を写真・動画で保存し、専門業者に正確な情報を提供できるようにする
- 早期に信頼できる業者に相談する:見積もりや施工実績を確認し、アフターフォローのある会社を選ぶ
- 被害の兆候を見逃さない:羽アリや蟻道、小さな異変を見逃さずに対応する
- 年に1回は定期点検を行う:早期発見により大きな修繕を避けることが可能
正しい知識と冷静な判断が、住まいを守るカギです。家族の安全と資産を守るためにも、安易な自己処理ではなく、計画的かつ専門的な対処を心がけましょう。